精神的・GTA
先輩から携帯電話に連絡があった。
辞めた会社の先輩なので、
電話に出なくても差し障りは無い。
しかし10年以上の付き合いを
断ち切る事が出来なかった。
電話口で先輩は、気を使っているのか
元気な声を出して話しかけてきた。
「久しぶり、今何してんの?」
「お久しぶりです。会社辞めてから腰が痛くなって、
家にじっとしています」
「え、大変だな。医者には行った?」
「行きました。歩く事は大丈夫なんですけど、
寝起きがまだ痛いです」
「そうか。ところでお前、今ヒマだろ?
天気も良いし、ちょっと俺の現場に出てこいよ」
確かにここ一ヶ月、ほとんど家から出ていない。
引きこもりやニートになったつもりは無かったが、
近所の人から見れば、その物ズバリだ。
他にも寄りたい場所もあるので行く事にした。
「わかりました、今から向かいます」
この先輩は住宅担当。
現場で作業している職人の数も比較的少ない。
自分が会社を辞めている事を、あまり知られなくても
済むだろう。
久しぶりに町中を愛車で走った。
高速道路の建設が着々と進んでいるようで、
交通警備員が至る所で車両をせき止めている。
現場に到着すると、先輩が担当する物件は完成間近。
来月中旬に展示会をするそうだ。
先輩は、小柄な体つきだが声は太くはっきり話す。
気も強く、自分の意志をストレートに伝える事が出来る。
そのため直属の上司と人間関係がうまく行っていない。
しかしあまり、気にしていないようだ。
建物を案内してもらった後、
近くの自販機で缶コーヒーをおごってもらい、
今後の展望について語り合った。
「辞める前に比べると元気になったな」
「そうですね。まだ一ヶ月しか経っていないですけど、
すごく昔のようです」
「そんな事を言うなよ。
社長はお前に、また戻って来いって言ったんだろ?」
「そうですね。でも義理と人情でそういうわけには...」
苦笑いをしながら冗談ぽく答えた。
自分が辞めた事で、会社の後輩2人を生け贄に出す結果に
なってしまっていた。
詳しくは書けないが、大人の世界は流動的で恐ろしい。
帰り際、ゲームショップへ立ち寄った。
中古のGTA.S(PS2版)が陳列してあったので購入。
しかしなぜか店員に
「在庫あるのでそちらを入れておきます」
と言われ、新品のGTA.Sに代えてくれた。
ラッキー。久しぶりに街へ出て良かった。
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